ロボットに認識の力を ~社員インタビュー コンピュータービジョンエンジニア編~

Mujinメンバーに話を聞こうシリーズ!今回は、コンピュータービジョンチームリードのJeronimo(ジェロニモ)をご紹介します。彼はカーネギーメロン大学でMujin CTOのRosenと同じプロジェクトに携わり、後にMujin初期のエンジニアの一人としてMujinに参画しました。(インタビューは英語ですが、日本語に訳してお届けします!)

ーー どんな学生時代を過ごしていましたか?

私はポルトガル生まれで、学生時代は徐々に、物理、コンピューター、数学に強い興味を持つようになりました。そして大学のが学部では、電気工学を専攻。電力、コンピューターサイエンス、電子工学、電気通信、ロボット工学を一通り学び、修士課程ではロボット工学を専攻することにしました。

ナビゲーション、分散フォーメーション制御、システム同定など、ロボット工学の様々な分野に取り組む中で、「形状認識、オブジェクト検出、および分類のためのコンピュータービジョン」を主なトピックとして、研究を進めました。IEE CVPR(Conference on Computer Vision and Pattern Recognition)などの主要な国際会議で発表の機会をいただいたことで、カーネギーメロン大学ロボット工学研究所での博士の道が開かれました。

ーー どうしてコンピュータービジョンに興味を持ったのですか?

ロボットに魅了された私は、ロボットをよりスマートで自律的にする方法を模索していました。そこで、人が何か動作を行う際に、視覚が重要な役割を果たすように、同じ認識ループをロボットに適用できれば、ロボットを自律的に動かすために非常に有益だと思ったのです。

「ロボット」と「機械」の大きな違いは、動作を指揮するループの一部に認識があるかどうかです。もしロボットが周囲を認識できないのであれば、ロボットを動かすために、誰かがボタンを押したり、信号を送信しなければなりません。その場合、ロボットは単なる機械であり、使用範囲はとても限定的になってしまいます。

コンピュータービジョンを付与すると、ロボットは周辺の環境を認識、モデル化し、相互作用が可能となり、できることが各段に広がります。例えば、賢いロボットは、環境をマッピングし、その中で自身の位置を特定し、ナビゲーションを行うことができます。人と対話したり、周囲の状況に基づいて反応し、モノを動かし、他の機械に指示を送ることもできます。ロボットにコンピュータービジョンの力を与えることで、ロボットは賢くなり、応用範囲は一気に広がるのです。

ーー CTOのRosenとの出会いは?

修士課程の終わりに、カーネギーメロン大学ロボティクス研究所の顧問の一人、「コンピュータービジョンの父」と呼ばれている金出武雄教授と出会いました。彼と話す中で、博士課程でカーネギーメロン大学へ行くことを決め、そこでRosenとも出会いました。金出教授は、当時Rosenのアドバイザーでもあり、後にMujinの顧問にもなった方です。

Rosenの集中力とハードワークさ、そして非常に複雑なプロジェクトをあたかも簡単にスムーズに進める能力に、当時から圧倒されました。彼はよく、プレゼンテーションの最中に、主張を示すために、その場で複雑なロボットシステムを組み(私が指を動かすよりも速くプログラミングしてました!)、有益な技術的議論を展開していて、それは本当に驚きました!

その後Rosenと同じプロジェクトに取り組むことになり、交流するようになりました。日本の大手自動車メーカー向けの部品ピッキング自動化のプロジェクトです。当時、2D画像からテクスチャのない光沢物体の姿勢推定を行い、モーションプランニングを使ってピッキングを行う、というのは、とてもユニークな取り組みでした。一緒に日本に飛んで、システムのプレゼンテーションも行いました。当時Rosenが、「Wow, awesome hard work!」と言ってくれたのを覚えています。

その後1年も経たず、Rosenはカーネギーメロン大学を卒業し、東京大学でのポスドクのため、日本に行きました。一方私は引き続きこの部品ピッキングのプロジェクトを推進しながら、QualcommとGoogleでインターンをし、小型機器でのAR(拡張現実)向けのコンピュータービジョンアプリケーションを開発していました。

ーー その後は?

Rosenは、Isseiと2011年にMujinを創業しました。しばらくして、Mujinのモーションプランニングアルゴリズムと連携するコンピュータービジョンアプリケーションの必要性を感じ始めていました。金出先生がMujinオフィスを訪れた際に、彼らは「Mujinのコンピュータービジョンエンジニアに誰かいい人はいないだろうか」と相談し、金出先生が私を推薦して下さったそう。私は当時博士課程の最中だったのですが、リモートでMujinのピッキングアプリケーション向けのコンピュータービジョンの開発を始めました。

ある日、MujinはDMS2014という展示会に向けて、金属部品のピッキングロボットシステムのデモを準備していました。それには、私が書いたコンピュータービジョンのプログラムも組み込まれています。そして展示会の2日前、突然Rosenからの電話。「今ハードウェアとソフトウェアを組み立てたんだが、動かない。そしてもう今からシステムを展示会に向けて出荷しなければならないんだ!展示会に来て、見てほしい」電話の直後、すぐに次の飛行機を調べ、翌朝日本へ飛びました。時差もあり、成田空港に到着したのは、展示会当日の朝6時。そのまま会場へ直行して、8時に到着。そして、すぐにシステムを調整し、展示会が始まる直前の10時、無事デモが動くようになりました!

“Join, join, join!” 展示会後、RosenとMujinメンバーから熱く誘ってもらいました。実際に日本に来てメンバーたちとも会い、彼らにもとても魅了されていました。自分のコードでロボットを自律的に動かすのはとても魅力的で、研究論文を書くこととはまったく異なる感覚でした。Mujinは素晴らしい会社のビジョンがあり、スマートで魅力的なチームメンバーが集まっていて、かつて誰も成し遂げられなかったことに取り組んでいました。

結局、展示会から2か月後、正式にMujinへ入社することになりました!

ーー 入社当初のMujinはどうでしたか

当時、ほとんどのメンバーが日本国外から集まった人たちでした。全く新しいロボット製品を0から作ることはもちろんとても大変だった一方で、見知らぬ国での生活も簡単なものではありませんでした。そのとき、CEOのIsseiの存在が大きかったです。

日本に引っ越ししてきて最初、Isseiの家に住まわせていただきました。お風呂もソファーも彼の部屋も、すべて快くどうぞ、と。さらにIsseiは、私たちのためによく料理をして下さり、例え家の食料をすべて食べつくしても、大丈夫と言ってくれたと思います。実際私はとてもたくさん食べていました笑。

Mujinの強さは、その技術と人から来ていると思っています。Isseiが私たちの身の回りの世話をして下さったからこそ、Mujinのみんなが固い絆で結ばれ、そして仕事に集中することができました。

私はMujinにとって最初のコンピュータービジョンエンジニアだったので、ほとんど0からの開発です。当時はまだ固まった製品というものがなく、それぞれ全く異なるデモをどんどん開発していく必要がありました。汎用的なライブラリを0から構築していく一方で、実社会・お客様にとって、どのようなロボットアプリケーションが最も役に立つのか、模索をしていました。

まずはICRAやiREXなど国際的なロボット展で、展示。その後、工場でのピッキングソリューションの提供を開始しました。後に、ピッキングの自動化ソリューションがまだ存在しなかった物流領域へ参入。徐々にマーケットやお客様のニーズを理解しながら、自分たちの製品を育てていきました。

そのときからMujinは急速かつ劇的に成長していったので、今のMujinの姿は入社当時全く想像ができませんでした。

―― 今の仕事はどうですか?

今ではMujinは製造と物流領域において、複数のソリューションを展開しています。新しい技術を突き詰める一方で、今あるソリューションを非常に堅固なものにするために一生懸命取り組んでいます。理想と現実の差を埋めるため、より速く・より賢くするため、日々ブレイクスルーを続けています。ロボットを完璧でより使いやすいものにしていくのは、非常に大変なことですが、高水準な製品を実現していくことに対して、とてもわくわくします。

さらに私はコンピュータービジョンチームを率いる立場です。 優秀なエンジニアと一緒に、ロボットの認識精度をより向上させ、「自動化を通じて人々の生活の質を向上させる」という会社のミッションを達成したいと考えています。非常に信頼性の高いコンピュータービジョンやロボットアプリケーションを実現させることは、とても難易度の高いことです。特に、私たちは様々な環境下においても、本稼働に対応し、安定して継続稼働可能で、色々な工程で利用できる汎用的なアプリケーションをつくっていく必要があります。こういった仕事の”Big picture(全体像)”をチームメンバーと共有し、この大きな共通の目標を共に目指すことがとても重要だと思っています。

ーー どんな人がチームに合うと思いますか? 

非常にスマートで、知能ロボットシステムの実現に対して強い意志がある人だと思います。目の前にはたくさんの課題があり、今の限界を明日には超えて、日々理想に近づけていくようなイメージです。

高い技術力が求められるような課題もあれば、革新的でクリエイティブなアイディアが必要な場合もあります。しかし何より、ロボティクスと自動化に対して強い情熱とnever-surrender(決して諦めない)精神が重要です!

ーー Mujinについて、どう思いますか? 

人々は、これまで歴史を通して自動化を実現してきました。例えば、交通機関のおかげで、人は数日間歩く代わりに1時間で移動できるようになりました。また、PCと検索エンジンのおかげで、図書館に行ってリサーチをしなくても、即座に必要な情報を取得できるようになりました。自動化によって、人は少ない労力と短い時間で、同じアウトプットが出せるようになりました。

しかし、技術的な限界のため、人がやらざるを得ない反復作業が未だ多く残っています。私たちは、それらのタスクをロボットが担い、人々がよりクリエイティブなことに時間を費やせるような世界を目指しています。

その過程は決して簡単ではありませんが、Mujinが実現していく世界にとてもわくわくしています!

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