Mujin Story #4:製造から物流に踏み出したきっかけ (2014-2016)

2011年に創業し、10年目を迎えたMujin。その創業期や成長の過程秘話をMujin Storyとして数回に分けてお届けしていきます!

Episode 4「製造から物流に踏み出したきっかけ」。 2009年の国際ロボット展で運命的な出会いを果たした創業者。Mujinを創業するまでの道のりは決して楽なものではなかったものの、2011年に創業し、世界から仲間を集め、難題を乗り越えながら調達・プロダクトの開発を進めました。前回の記事はこちら。
Mujin Story #3:世界から集まったドリームチームとMujinプロダクトの誕生

今回は、2度目となる資金調達、そして物流に参入したきっかけやその歩みをご紹介します。

2度目の資金調達

本社も開設し、人集めもプロダクト開発も軌道に乗り始めた2014年8月。Mujinは、総額6億円のシリーズB資金を、前回から引き続き東京大学エッジキャピタル(UTEC)と、今回新しくジャフコ(JAFCO)から調達しました。   ジャフコと出会ったのは、2012年。それからジャフコは2か月に1回くらいのペースでMujinオフィスに足を運んでくださいました。投資いただいた当時、20社以上のベンチャーキャピタルが候補として挙がっていましたが、その中でジャフコを選ばせていただきました。オファー額はトップではなかったものの、決め手となったのは「一番信頼できた」から。

  よくMujinに足を運んでくださったジャフコは、現場主義を大切にするMujinのカルチャーとの親和性が高かったのです。 (当時の詳しい話は、対談記事「産業用ロボット」でガレージからグローバルへ 技術ベンチャーの挑戦【MUJIN 滝野 一征 & JAFCO】で。)  

初の主力製品「ピックワーカー(Pick Worker)」をリリース

2015年1月、Mujinはついに初の主力製品となる「ピックワーカー」の販売を開始しました。今までロボットを動かすには、動作を教えること(ティーチング)が必要でしたが、製品をロボットに接続すると、ティーチングなしに、状況に応じて最適な動きをとるようになります。 これにより、例えばティーチングに1年以上かかっていた製造業の部品のピッキング工程を、数週間(今では1日)で自動化できるようになりました。  

MUJIN ピックワーカー – 次世代バラ積みピッキング知能システム(2015)

翌年2016年には、「第7回 ロボット大賞 経済産業大臣賞」を受賞。たった30人弱のベンチャー企業が、名誉あるロボット大賞を受賞するというのは、異例のことでした。

2016年 ロボット大賞

Isseiの、初の受賞スピーチはこちら。

Mujinは、創業当初から一貫して産業用ロボット分野にぶれずに注力してまいりました。なぜならロボットをより知能的に、より使いやすくするMujinのティーチレス技術こそがロボットの活用範囲を広げ、市場の拡大、生産現場の生産性や品質の向上、ゆくゆくは日本はじめ先進国がかかえる少子高齢化という問題に対して、必ずや新しい価値を創造すると確信していたからです。

この度賞を頂きましたMujinコントローラピックワーカーも、ティーチレス技術によってロボットが自分で見て、動作を高速で考えることができるようになれたことで、実際に産業の中で膨大な割合をしめる、単調なピッキング作業をロボットが担えるようになりました。その結果貴重な人資源をよりクリエイティブな仕事にまわし、全体の生産性を向上するという、新しい価値を実際に生み出しはじめております。

Mujinはご存知のとおり、世界のトップエンジニアだけで構成される、たった30人のベンチャー企業であります。カーネギーメロン、スタンフォード、MIT、パリ大学、東京大学、北京大学、清華大学、その他10国籍の多国籍チームが生み出す高い技術力と、現場のプロによる現場力が融合した会社として、今でこそ少しは人に知っていただける存在にはなりましたが、わずか5年前はまだ何もなく、アメリカから単身日本にやってきたロセン博士に私が説得され、2人で文京区小石川のガレージを改装した44平米の場所で、テーブル2つ、ラップトップ2つで事務所を開いたのが始まりでした。

現実主義の私と根っからの技術者のロセン博士では、バックグラウンドや考え方がまったく違うため、意見はまったくかみ合わず、衝突は日常茶飯事。その上やっと作った商品が生産現場で役に立たなかったり、会社の資金が底をつきそうになったりで、「このビジネスはやっぱりだめか」と、客先からの帰りの車の中で2人意気消沈して、何度も諦めそうになりました。
しかしそのたびになんとか乗り越えてこれたのは、「このモノづくりの中心地・日本でロボット自動化による技術革新を起こす。自動化で人々の生活の質をよくする」という2人の決意、信念があったからだと思います。初志貫徹するという一貫性と、不可能を一切認めないというタチの悪い頑固さを、私はCTOのロセン博士から学びました。ここまでくるまでには相当色々ございましたが、当時こんなに大変だとわかっていればやらなかったかもしれません。ただ、今では素晴らしいチームメンバーと、日本の太志ある企業の皆様と共に意義あることに挑戦できる、貴重な機会を頂いたことに大変感謝しております。

今回を含め、歴代の受賞者の多くは、製造業、物流業、農業という、日本が世界に誇る産業の中で活動しておりますが、悲しいことに、俗に3Kとも言われる、あまり若い方々が自ら進んで働きたくない産業でもあります。しかし製造業は、GDPの大部分を占める、国の主要産業であり、人の生活に直結する、大変重要な、我々若い世代が命をかける価値がある産業です。

それを思うとき、まさしく我々ロボット企業には2つの使命があると思います。
1つは当然、ロボット自動化技術の革新により世界中の生産性を向上させること。
2つめは弊社が成功することにより、戦後の日本のように、若い優秀な人材を、この素晴らしい製造業に再度呼び込むことです。


今回の受賞も、受賞者単体の話ではなく、この重いロボット産業でこれから戦おうとしている、チャレンジャー企業、研究チームへの励みになるものと信じております。
社会貢献の信念がある会社には、世界から良い人材と技術が集まります。良い人材が集まれば、チャレンジ精神のあるパートナー企業様が集まり、その結果価値ある商品ができます。今日本にできつつあるこの良い流れを、より大きい大河にしていくため、私達一同の取り組みはこれからも変わりません。それは、技術革新により持続可能な事業を興し、その事業により社会に貢献します。
これは今回の受賞者共々、皆様同じ気持ちで各事業に取り組まれているものと思います。だからこそ、従来は難しいと言われていた介護、農業、エンターテイメント、医療その他分野にも、見てのとおりロボット実用化の兆しが芽吹いております。私達一同は今回の栄誉を励みとし、これからもなお一層の研鑽を重ね、人々の生活の質向上のため、それぞれの活動に引き続き邁進してまいりたいと存じます。

2度目の本社移転

前回の移転から約1年経った2015年8月、事業拡大に伴い湯島から本郷へ本社を移転しました。

前 湯島本社

前の湯島本社と比べ、ようやくきちんとしたオフィスらしくなってきました。3.6倍の広さとなりスペースの余裕も生まれ、もう次の移転は遠いだろうとメンバーたちは当時感じたそう。(実際には、このあと2年経たずに手狭となり、また移転をするのですが……。)

物流参入のきっかけ:アスクル様との出会い

ピックワーカーの発売と同時期。Mujinに、法人向けオフィス・現場用品を販売する大手企業アスクル様から1通の問い合わせメールが届きました。「物流倉庫でティーチレスのロボットを実現できないか模索しています。」   今でこそ物流の人手不足は再三メディアにも取り上げられていますが、当時はまだほとんど着目されていない時代でした。しかしアスクル様は当時から先を見据えており、ECの取引先が増える一方で人口減少が進み、今後倉庫内作業のための人手確保がどんどん難しくなる、といち早く危機感を感じ、動き出されました。倉庫作業の中でも、一番人手が必要だったのがピッキングの作業でした。   「倉庫のピッキングを自動化するには、ティーチレス(動作を教えなくても自律的に動く)ロボットが必要ではないか」とアスクル様は考え、ロボットメーカーや大学の教授へ相談に行かれたそうです。100以上回ったにも関わらず、回答は、「そんなことできませんよ」であったり「ずっと研究されているけど、まだ実現できていません」であったり。ロボットのティーチレスは不可能と一般的に考えられている時代でした。   そこで試しに「産業用ロボット ティーチレス」とWeb上で検索し、一番上に出てきたMujinに連絡をしてくださったといいます。  

アスクル様とともに物流へ参入を決意

連絡をいただき、すぐに打ち合わせ。概要を把握すると早々に、現場を見せてください、とお願いしました。まずは現場を見ないと本当の課題は把握できない、というのがMujinの考え。エンジニアが積極的に現場に行こうとするカルチャーは珍しく映ったそうですが、同じく現場主義を大切にするアスクル様にとって、「Mujinは信頼できそうだ」と感じるきっかけになったとそうです。   実際に現場を拝見して課題を把握し、Mujinの技術で解決に貢献できそうだと手ごたえを感じることはできました。ただ、これまで製造業でビジネスを進めていたMujinにとって、物流へ踏み出すというのは勇気の必要な決断でした。 一方、プロダクトの現物がない中で「この技術があればできるはず」というMujinの言葉を信じ、投資を決めてくださったアスクル様の決断も、大変大きなものだったと思います。   2015年12月、Mujinはアスクル様と業務提携を締結。正式に物流領域に参入しました。  

これまでできなかった新しいことを実現するのは、もちろん簡単ではありませんでした。開発が難航し、徹夜が続くMujinメンバー。アスクル様もよくオフィスにいらしていたので、その状況を把握してくださっていました。 そして時には、仕様書作成やテスト等を引き取ってくださることも。パートナーとして寄り添いながら、二人三脚でプロジェクトを進めてくださいました。 このように理解のあるアスクル様に出会っていなければ、今のMujinは存在していないことでしょう。   2016年末、無事最初の物流ピースピッキングロボットを稼働させました。世界で初めて、ティーチレスの物流ピッキングロボットの実用化を成功させた事例です! (当時のプロジェクトの話は、アスクル様採用ページにも未知のロボット技術をECに。人類の未来にも貢献するチャレンジ。として掲載されています。)   そこから、複数センターの自動化に共に取り組んできました。  

2019年に稼働したアスクル様 Value Center関西で動くピースピッキングロボット

こうして製造業で事業を始めたMujinは、アスクル様との運命的な出会いによって、物流の自動化も進めていくことになりました。

続きを読む ⇒ Mujin Story #5:世界初の完全自動倉庫の実現と複数の受賞

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